本当にソーシャルリクルーティングはコスト削減につながるのか?費用対効果を考える

「ソーシャルリクルーティングはコスト削減に効果あり」は本当か?
日本の企業が、ソーシャルメディアを活用した採用をはじめる理由として、
「採用コストの削減」がよく挙げられます。
一般の採用メディアへの出稿には相応の広告費が必要になりますし、人材エージェントを通じての人材採用にも多額の人材紹介手数料を支払う必要があります。一方ソーシャルリクルーティングであれば、こうしたコストを削減できるというイメージがあります。
「コストを抑えて必要な人材を採用できたか」ということは、採用プロセスの評価にあたって重要なポイントです。また長引く不況の影響で、採用費を湯水のように使える会社は多くはありません。
こうした背景から「自社が求める人材に、コストを抑えてリーチできる手段」として、ソーシャルリクルーティングが注目されています。
今回は、ソーシャルメディアを活用した採用のコストを他の手段と比較して評価するために、費用の洗い出しを行いましょう。さらにソーシャルメディアを使った採用でどういうところに費用面でのメリットが発生するかを考えてみます。
ソーシャルメディアは無料、しかし・・・
TwitterやFacebookをはじめ、企業の採用活動で利用されるほとんどのソーシャルメディアが無料で使うことができます。
ただし、現在アメリカで、採用にもっとも活用されているソーシャルメディアであるLinkedInは例外です。LinkedInでは、無料で利用できる基本機能に加えて、求職者の詳細検索や、スカウトメールの送信、求人掲載などの機能が利用する場合は、有料のプレミアムアカウントにアップグレードする必要があります。
では、TwitterやFacebookなどの無料で使えるソーシャルメディアだけを利用して採用に成功すれば、「採用コストがゼロだった!」といえるでしょうか。
必ずしもそうは言い切れません。なぜなら、あくまで広告出稿費用や紹介手数料という名目で、外部に支払うコストがかからなかったに過ぎないからです。事実、ソーシャルメディアで採用を成功させるには、表に出てこない隠れたコストがかかるのです。
ソーシャルメディアを始めたけど、応募者がこない!?
ここで、あなたの会社がソーシャルメディアを活用した採用をはじめることになったと想定してみてください。「Facebookをはじめよう!」「Twitterでつぶやこう!」という方針になり、Facebookページを用意して、Twitterでもつぶやきはじめたとします。
しかし、それだけでは学生や求職者からの応募が即座に殺到するということはないでしょう。ましてや、求める優秀な人材に出会えることはほぼ期待できないでしょう。
これは、ホームページだけを作ってもお客がこないのと同じです。つまり、お客である学生や求職者を誘導する仕組みを用意しないといけないのです。通常のWebサイトなら、SEO対策をしたり、リスティング広告をかけたりという手法で、サイトに集客します。
ソーシャルメディアの場合はどうでしょうか。
ソーシャルメディアでファンやフォロワーを集めるためには、見た人が共有したいと思う有用な情報や、面白いコンテンツを用意しなければなりません。
そしてソーシャルメディアの活用によって、採用コストを削減していくことを目的とするならば、このファンやフォロワーの中からの採用を実現する必要があります。
しかし、このファンやフォロワーを増やすということは、なかなか容易ではありません。
ファンやフォロワーをどうやって集めるか
ファンやフォロワーを増やすには、以下の2点のうち少なくともどちらかを満たす必要があります。
1.積極的にシェアしてくれそうな企画力の高いコンテンツが存在している
2.ファンになったり、フォローしたくなるような情報が定期的にフィードされる
まず、1の企画やコンテンツを準備するには、Facebookページの構築も含め、数十万円のコストがかかると見てよいでしょう。また、2のファンを増やすための情報を定期的にフィードすることも、そのための人件費がかかることになります。
よほど爆発的にファンが増えるようなコンテンツを持っていない限り、ファンやフォロワーは一朝一夕には増えません。地道に長期間にわたって、ターゲットに訴求できる情報の内容をきちんと検討し、地道にフィードしていくという作業が必要になりますから、そのトータルコストは馬鹿にはできません。
よってソーシャルメディアを活用したから、すぐにコスト削減効果、費用対効果が現れるというのは稀なケースと考えておいたほうがよいでしょう。
比較するための採用コストの洗い出し
採用コスト、採用単価は、企業によってさまざまな方法で算出されています。たとえば、採用メディアを利用する場合、広告費を採用できた人数で単純に割り算して採用コストを計算する場合が多いでしょう。
しかし、ソーシャルメディア活用の費用対効果を、他の採用手法と比較するには、単に広告費や制作費だけで比較すると本質を見誤る可能性があるので注意が必要です。
ここで、採用手法ごとに想定される費用項目について洗いだしてみましょう。
・広告出稿費
・書類選考、面接にかかる人件費(応募数が多いとこのコストが膨らみがち)
・選考管理にかかる人件費(応募数が多いとこのコストが膨らみがち)
・採用説明会の開催コスト
・採用サイト構築費など
・人材紹介手数料
・書類選考、面接にかかる人件費
・選考管理にかかる人件費
・採用サイト構築費など
・ソーシャルメディアのカスタマイズ費(企画によっては高額に)
・ソーシャルメディアの運用にかかる人件費(長期にわたるため、馬鹿にできない)
・書類選考、面接にかかる人件費
・選考管理にかかる人件費
・採用サイト構築費など
こうした費用を見積もって、それぞれの手法ごとの総コストを考えて比較しないと、本当の費用対効果はみえてきません。
ソーシャルメディアを使うとどこに費用対効果がでるの?
ソーシャルメディアを活用することで明確に効果を期待できるポイントが2つあります。
■企業にマッチした学生や求職者にアピールできる
採用メディアからの応募の場合、数が膨大になりすぎ、管理コストや選考コストがかさみがちです。しかも、企業が採用したいと考えているターゲット層以外からの応募も多くなってしまうため、その書類選考や面接に時間と手間を取られてしまうこともあるでしょう。
ソーシャルリクルーティングでは、企業が採用したいと思うターゲット層に響くコンテンツを戦略的に検討し、ソーシャルメディア上で伝えていくことで、興味をもった学生や求職者がファンやフォロワーになり、結果として、初期段階から対象者をしぼりこんでいくことが可能です。
情報発信の結果として、対象者が絞りこまれれば、選考の手間が削減できるだけでなく、就業してからの離職リスクも低減できるため、結果として採用コストを下げることが可能です。
■良いコンテンツを作れば、採用情報は無料でひろがっていく
先に「閲覧者が積極的にシェアしてくれそうな企画力の高いコンテンツが存在」していれば、そのコンテンツはどんどんシェアされ、ファンやフォロワーは増えていくと述べました。
では、どうしたら品質の高いコンテンツを用意できるでしょうか。
そのためには、採用担当者や会社のメンバーが知恵をしぼって、どうすれば学生や求職者がシェアしてくれるか?いいね!を押したいと思うか?ソーシャルメディアで話題となるような面白いものになるか?を考えぬくしかありません。
企画は決して楽ではありませんが、ここにしっかり力を注ぎ、おもしろいコンテンツが用意できれば、ソーシャルメディアでは想像以上のスピード、ボリュームでその情報が「タダで」広がって行きます。
お金はかけられなくても、知恵をしぼれば、その効果は莫大なものになり、プロモーション費用を大きく削減することができるでしょう。
まとめ:採用コストとプラスαの可能性を見積もろう
先進的にソーシャルメディアの活用に成功した企業が、驚くべきコストで採用に成功した例もあります。しかし、今のところ、ソーシャルメディアを活用した場合の採用コストや採用単価に関するデータはほとんどありません。
単にソーシャルメディアを活用すれば、採用コストが下がるという安易な発想に陥ることなく、きちんと費用対効果を他の手段と比較する意識を持ちましょう。
さらにソーシャルメディアならではの採用コスト削減ポイントも理解し、採用に活用していくことが必要です。そして、コンテンツの制作や日々の運用が可能かどうかもじっくり検討してみましょう。
Image: digitalart / FreeDigitalPhotos.net

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